やさしい暴力。｜藤沢／グッドワイフ

今日、手の中でひとつだけ思った。

握ったあとに、
すぐ形が戻ってしまうものがある。
どれだけ力を置いても、
傷もつかず、変わりもしない。
やわらかく見えるのに、
じつは壊れない“つくり”になっているもの。

そして握っている側は、
その強さに気づかない。

ていねいに触れているつもりの手つきが、
ほんとうはどんな力をかけているのか。
どこに重さを乗せているのか。
そこを見ないまま、
優しさの形だけをなぞっていく。

店のなかにも、
そういう“やわらかい暴力”が静かにあふれている。
壊れないものを相手にしていると、
自分の雑さにも、粗さにも、
いつまでも気づかない。

夜になると、
その重さの向かう先だけが
すこしだけはっきり見えてくる。

わたしはただ、
どこに力を置けば歪まないのか。
どこに置けば戻らないのか。
その小さな差だけを
静かに確かめていたい。


藤沢🌙